▋ 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
IMHAは、免疫システムの誤作動により、自分の赤血球が破壊されてしまい貧血に至る病気です。貧血の進行および血栓症が主な死因となる重大な病気です。症状としては、発熱、可視粘膜蒼白(歯ぐきが白い)、黄疸と黄疸に伴う橙色尿、血管内溶血が生じている場合は赤色尿(赤ワイン状)、などがみられます。血球形態評価、貧血を引き起こすその他の病気の除外診断、などの結果を総合的に判断して診断します。IMHAの重症度は様々ですが、全体の致死率は約4割とされ、特に著しい溶血を伴う甚急性IMHAの致死率は約9割とされています。治療は、誤作動を起こした免疫システムを抑えるため、ステロイド剤と免疫抑制剤による免疫抑制療法が中心となります。また、導入療法の際、薬の効果が得られるまでの間を乗り切るための緊急治療と支持治療が非常に重要です。再発しやすい病気であるため、維持療法を数カ月継続する必要があり、その際の合併症を管理するための支持治療も重要で、この間を安全に治療継続することができれば、長期生存が期待できます。
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※補足: 貧血を呈する赤血球系の免疫介在性疾患には、IMHAの他に非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)と赤芽球癆(PRCA)があります。これらの病気は、赤血球のもととなる骨髄内の細胞が破壊の標的となっている病態であり、発生はIMHAに比較して少なく、発症に至る詳しい機序は明らかにされていません。NRIMAとPRCAは貧血の進行が緩徐であるため、身体が慣れながら進行し、重度の貧血になってから(歯ぐきが真っ白になる程進行してから)発見される場合がほとんどです。血球形態評価、貧血を引き起こすその他の病気の除外診断、骨髄検査、などの結果を総合的に評価して診断します。治療はIMHAと同様に、ステロイド剤と免疫抑制剤による免疫抑制療法が中心となります。